【日本の風習】年末の風物詩:年越し蕎麦と除夜の鐘

【日本の風習】年末の風物詩:年越し蕎麦と除夜の鐘 日本の風習
日本の風習

【日本の風習】年末の風物詩:年越し蕎麦と除夜の鐘

年越しそばを食べて除夜の鐘を聴く」これぞ日本の年末!といった習慣ですね。「年越し蕎麦」はいつから始まったのでしょうか。また、除夜の鐘についても「108回鐘を突く」とこどものころから聞かされていますが、なぜ108回なのでしょうか。日本の食文化ともいえる「年越し蕎麦」、風情のある習わし「除夜の鐘」の由来について調べてみました。

*年越し蕎麦の起源

江戸時代中期には、商家に月末に蕎麦を食べる「三十日蕎麦(みそかそば)」という習慣がありました。この習慣が大晦日だけに行われる「年越し蕎麦」になった、と考えられています。そのころの江戸では「脚気(かっけ)」が流行していて「そばを食べている人は脚気にならない」といううわさが、流行を後押ししたとされています。年越しそばの由来には諸説あります。

・蕎麦は細く長いことから、延命・長寿を願ったものであるとする説
・蕎麦が切れやすいことから、1年間の苦労や借金を切り捨て、翌年に持ち越さないように願ったという説
・家族の縁が長く続くようにとの意味であるという説

鎌倉時代の貿易商人「謝国明(しゃこくめい)」による承天寺(福岡県福岡市)の「世直しそば」に由来するという説もあり、飢餓(きが)の時、謝国明が蕎麦を人々に振る舞ったところ、食べた人が翌年に福に恵まれたことから、博多では年越し蕎麦を「福そば」「運そば」と呼び、年越し蕎麦の起源であるとされています。

*ネギを入れて年内に食べきる

蕎麦は切れやすいことから「今年一年の災厄を断ち切る」という意味で、大晦日の晩の年越し前に食べるとされます。年を越してから食べることは縁起がよくない、蕎麦を残すと新年は金運に恵まれない、などといわれます。また、薬味のネギにも意味があり、「労ぐ(ねぐ)」:疲れをねぎらう意味、「祈ぐ(ねぐ)」:祈るという意味、などがあるそうです。1年の悪いことを断ち切り、1年の頑張りを労い、翌年の幸せを祈る、という想いを込めてネギをたっぷり入れた年越しそばを大晦日の内に残さず食べるようにしましょう。

【日本の風習】年末の風物詩:年越し蕎麦と除夜の鐘

*除夜の鐘の歴史

大晦日のことを「除日(じょじつ)」といい、その夜のことを「除夜(じょや)」といいます。「除」という言葉には、古いものを捨て新しいものに移る、という意味があり、「除夜の鐘」には、心穏やかに新年を迎えようという願いが込められています。お寺の境内にある大きな鐘は、正式名称を「梵鐘(ぼんしょう)」といい、仏教の仏具で、梵鐘の音には苦しみや悩みを断ち切る力があるといわれています。

「除夜の鐘」は、中国の禅宗寺院の「年の変わり目に鬼門(北東方向)からの邪気を払うために鐘をつく」という習慣に由来するとされています。これにならい、日本でも禅寺で鎌倉時代以降に朝夕に梵鐘をついていましたが、室町時代には大晦日から元旦にかけての除夜に欠かせない行事になったそうです。明治時代には除夜の鐘の風習は忘れられていましたが、東京・上野の寛永寺にて1927年(昭和2年)、ラジオによって史上初めて中継放送されたことにより、「除夜の鐘」という風習が日本に広く定着するきっかけとなりました。1941年(昭和16年)、日本は第二次世界大戦に突入し、戦況が悪化し始めると多くの梵鐘は金属回収令によって失われ、除夜の鐘が鳴らせなくなりました。このため、一部寺院では大太鼓を代わりとしていたそうです。

*除夜の鐘はなぜ108回なのか

大晦日の深夜0時を挟む時間帯に、寺院の梵鐘をつきますが、多くの寺で108回つかれます。この「108」という数の由来については、複数の説があります。いずれにしても除夜の鐘をつく理由は、今年一年の苦しみや悩みを取り去り、新しい晴れやかな気持ちで新年を迎えるという意味に変わりはありません。

煩悩の数
眼(げん)・耳(に)・鼻(び)・舌(ぜつ)・身(しん)・意(い)の六根のそれぞれに好(こう)・悪(あく)・平(へい)があって、6×3=18類、この18類それぞれに浄(じょう)・染(せん)の2類があって、18×2=36類、この36類を前世・今世・来世の三世に配当して、36×3=108となり、これが人間の煩悩の数を表す。

四苦八苦
四苦八苦の意味で四九(4×9=36)と八九(8×9=72)を足して、36+72=108。

1年間
月の数の12、二十四節気の数の24、七十二候の数の72を足して、12+24+72=108となり、1年間を表す。

除夜の鐘は大晦日の深夜からつきはじめ、年内に107回、年が明けたタイミングで最後の1回をつくのが一般的ですが、回数やタイミングはお寺によって様々で、もっと多くの数をつく場合もあれば、年内に全てつき終えてしまう場合もあるようです。鐘はお坊さんがつく場合もありますが、多くの寺院では一般の参詣者も鐘をつくことができ、希望者が多い場合は108回以上つくこともあります。有名な寺院では事前に整理券を配布したり、鐘つき料が必要な場合もあるので、興味のある方は事前にチェックしたほうが良さそうです。

【日本の風習】年末の風物詩:年越し蕎麦と除夜の鐘

 

NHK『ゆく年くる年』で、日本各地の寺院で除夜の鐘がつかれながら年が明ける様子が全国中継されています。毎年「炬燵(こたつ)にミカン」という日本スタイルで番組を見ていますが、この『ゆく年くる年』という番組タイトル、放送開始時は『除夜の鐘』というタイトルだったそうです。なかなか寺院で除夜の鐘を聴くことはできませんが、澄んだ美しい鐘の音色に心が穏やかになっていくのが自分でも分かります。年末の繁忙から解放され、年越し蕎麦を食べながら頑張った自分を労い、除夜の鐘を聴いて心を癒す。今年も例年と変わりなく、そんな大晦日を過ごしていると思います。みなさま、良いお年をお迎えください。

 

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