【暦のおはなし】4月19日:穀雨(こくう)
1年を24等分した暦である二十四節気では、4月4日の清明(せいめい)の次は6番目の「穀雨(こくう)」。4月19日〜5月4日頃を差します。穀雨とは、「雨が百種の穀物を生じさせる」という意味の「雨生百穀(うりゅうひゃっこく)」が由来とされ、全ての穀物を潤して田畑の準備が整う春の雨が降るころとされています。『こよみ便覧』には「春雨降りて百穀を生化すればなり」と説明されています。春の季節の最後にあたる穀雨は、季節的に種まきや育苗のために雨が必要な時季です。実際には、このころは特に雨が多いというわけではありませんが、一旦降れば「菜種梅雨(なたねづゆ)」と呼ばれる長雨になることもあります。「清明になると雪が降らなくなり、穀雨になると霜が降りることもなくなる」という言葉があり、変わりやすい春の天気もこのころから安定し、日差しも強まってきます。
※こよみ便欄:江戸時代に江戸で出版された太玄斎(たいげんさい)の著による暦の解説書
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*しっとりと降り注ぐ恵みの雨、穀雨
二十四節気よりさらに細かく区切った七十二候では、穀雨も3つの季節に分けられます。
■初候/葭始生(あしはじめてしょうず):4月19日~4月23日頃
水辺の葭(あし)が芽を吹きはじめるころ。葭は「葦」とも書き、「よし」とも呼ばれます。もともと本来の呼び名は「あし」でしたが、「悪し(あし)」に通じるため、「善し(よし)」と言い換えられたという由来があります。関西地方では、お金を意味する「お足(おあし)」に通じるため、「あし」の名前が残っています。葦(よし)は、風が吹いて地面に倒されても、茎が柔軟なため折れることがなく、やがて起き上がって上に向かって生長します。葦(よし)の茎で作った「簾(すだれ)」は「葦簀(よしず)」と呼ばれ、昔から親しまれてきました。また、屋根材としても最適で、茅葺屋根(かやぶきやね)の葺き替え(ふきかえ)に現在でも使われています。
■次候/霜止出苗(しもやみてなえいずる):4月24日~4月28日頃
霜が降りなくなり、苗が健やかに育つころ。「八十八夜の別れ霜(はちじゅうはちやのわかれじも)」という諺(ことわざ)があり、立春から数えて88日目のころ、穀雨の次の立夏(りっか)直前に降りる霜は、それが最後となることが多いことをいいます。そこで、八十八夜は種蒔き(たねまき)の目安とされています。「八」「十」「八」の三つの字を組み合わせると「米」になることから、農作業に縁起のいい日ともされてきました。また、「九十九夜の泣き霜(くじゅうくやのなきじも)」という言葉もあり、一般に霜は八十八夜ごろまでといわれていますが、5月半ばごろまで泣いても泣ききれないほどの大きな遅霜の被害が発生することもあり、油断は禁物だという意味です。
■末候/牡丹華(ぼたんはなさく):4月29日~5月4日頃
牡丹(ぼたん)の花が咲き始めるころ。牡丹の別名は、「穀雨花」と呼ばれます。牡丹は、品種改良が盛んに行われ、園芸品種がとても多い花です。花色も豊富で(原種は紫紅色)、赤色・赤紫色・紫色・薄紅色・黄色・白色とさまざま。花形も多彩で、 一重・八重・千重、大輪・中輪などがあります。また、着物を始め、陶磁器や漆器、家具などに昔から好んで描かれてきました。雛人形の調度にも牡丹をあしらった道具が多いそうです。
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*穀雨の旬のもの
■果物:枇杷(びわ)
枇杷(びわ)は、その栽培方法により露地栽培とハウス栽培に分けられます。ハウスびわで4月下旬から5月下旬、露地びわで5月下旬から6月下旬と、初夏を告げる代表的な果物です。「害虫」や強い日差しによる「しみ・そばかす」などから果実を守るため、果実が小さい時に生産者が1つ1つ袋をかけて大切に育てます。この「袋かけ」は、美しいびわを作るために欠かせない大切な作業です。「花摘み」「袋掛け」「収穫」と急傾斜で樹に登る作業が3度もあるため、大変な労力がかかりますが、そのような生産者の努力があって、おいしいびわを食べることができます。冷やしすぎないで食べるのが、おすすめ。常温の方が甘みが感じられ、よりびわの風味を感じることができます。傷んでしまうためゴシゴシ洗わず、食べる直前に軽くすすいでから、軸を持って先端の部分から皮をむくと、手を汚さず上手にむけます。
■野菜:筍(たけのこ)
筍(たけのこ)の生長は早く、地表に顔を出すころは1日当たり数センチメートル程度だったものが、10日目ごろには数十センチメートルから、時には1メートルを超えます。タケノコにうっかり帽子を掛けたまま1日経つと(手が届かない高さまで持ち上げられて)取ることができなくなる場合があるともいわれ、「筍」の漢字の由来は、「旬(じゅん):時間の単位のひとつで10日間のこと」から来ているといわれます。春先、地面から芽が出かけているものをタケノコとして食用にし、旬は4月から5月です。掘ったその日のうちに調理または販売・出荷されるタケノコは「朝堀筍」といわれ、掘りたてを皮付きのまま炭火焼きにした焼き物のほか、特に新鮮なものであれば生や、軽く湯がいた刺身として味わえるため、これを目当てにタケノコ掘りに出かける人も多いそうです。タケノコは掘り上げてからの鮮度落ちが極端に早く、時間が経つとかたくなると同時に灰汁(あく)が増えてえぐみが増すため、掘って収穫したその日のうちに調理するか灰汁抜きして下ごしらえしてから保存します。
・雨後のタケノコ
雨が降った後はタケノコが生えやすいことから、何かをきっかけとしてある物事が続々と発生すること。
・タケノコ生活
たけのこの皮を1枚ずつはぐように、身の回りの衣類・家財などを少しずつ売る、または食料と交換して食いつないでいく生活。
・タケノコ医者
筍がやがて竹になり藪になることから、技術が下手で未熟な藪医者にも至らぬ医者のこと。
・竹の子の親まさり
親よりも子が優れているたとえ
■魚介:浅蜊(あさり)
1年をとおして食べることのできるアサリの旬は春4~5月と秋9~10月といわれていますが、とくに4月から5月にかけては産卵を控えて身がふっくらして、旨みが豊富になるおいしい季節です。アサリの語源は「漁る(あさる)」といわれています。昔は漁れるほどに、アサリが溢れていたようです。しかし現在は90%以上のアサリが中国や韓国からの輸入物で、日本国内で蓄養されたものが出荷され、流通しているようです。市場での評価は「産地」というよりも「大きさ」によって決まることが多いようです。美味しいアサリの選び方は、縞目のはっきりとした、扁平のアサリが美味しいとのこと。また殻を硬く閉じ、塩水に入れると勢いよく水管から水を噴出すものが新鮮であるとのこと。また、アサリの貝殻には、同じ模様はひとつもないといわれています。
*穀雨の時季の大和言葉
うまたゆの由来となった大和言葉には、季節を表す美しいことばが多くありますので、少しご紹介します。
■春驟雨(はるしゅうう)
夕立のように激しく降る春のにわか雨のこと。『春夕立』ともいう。
■春雨(はるさめ)
春にしとしとと降る細い雨脚の雨のこと。おもに晩春に降る雨をいう。
■甘雨(かんう)
しとしとと降り、草木を育む春の雨。農耕を始める時季に時を得たように降り、万物に潤いを与える雨。
■藤の雨(ふじのあめ)
藤の花の咲くころに降る雨のこと。
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穀雨のころには、変わりやすい春の気候が落ち着いて新緑の栄える爽やかな季節になってきます。茶摘みが始まるお茶農家や、苗代を仕込む米農家にとって大事な時季です。春の柔らかな雨に大地は潤い、新芽や若葉はぐんぐん育っていきます。若葉萌える新緑の季節、木々の緑も雨上がりは一層色鮮やかです。日差しも徐々に強まり、季節は春から初夏へと移り変わっていきます。この時季は、ゴールデンウィークもあり、お出かけには最適のころ。心地よい季節を感じに外へ出かけていきましょう。
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